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融合/『ROCK or LIVE -ロックお笑い部- Vol.3 Base Ball Bear × ダウ90000』について

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 自分はBase Ball Bearというバンド とダウ90000という8人組ユニットのファンだ。この2組が大阪でツーマンライブをすることになり、2024年1月27日、GORILLA HALL OSAKAにて行われた『ROCK or LIVE -ロックお笑い部- Vol.3 Base Ball Bear × ダウ90000』に参加した。それぞれの活動を追い続けている自分にとっては、思ってもみないコラボ企画だった。

 

 開演時、Base Ball Bear のお馴染みの出囃子であるXTCの『Making Plans for Nigel』が鳴り響き、まずはBase Ball Bearの3人が登場するのだなと構えていると、意外にも舞台に現れたのはダウ90000の上原佑太と中島百依子。いきなりコント『ピーク』が始まった。

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 終電間際に街で偶然知り合った社会人の男女が、外で飲みながら話していると…というもので、ダウ90000の中でも珠玉の切ないコントだ。そのコントが終わると、Base Ball Bearの3人がスッと舞台上に現れる。切なさが残るコントの内容と呼応するかのように、Base Ball Bearの楽曲『不思議な夜』の演奏が始まり、『short hair』『そんなに好きじゃなかった』といった楽曲へ移行していく。

 

 続いて、ダウ90000から蓮見翔と園田祥太が登場し、2人だけで漫才を披露。実際、この2人はダウ90000ではなく『1000』というコンビ名でM-1グランプリにも出場している。1週間前に5年付き合った彼女と別れたばかりの園田のタイムリーな話題に沸き、「このライブを神回にしたい」と息巻く蓮見の毒舌が止まらず、園田や観客を巻き込みながら笑いの渦を起こす。その後は、Base Ball Bearとバトンタッチ。まもなくリリース予定のアルバムから新曲『夕日、刺さる部屋』、2023年6月28日に配信リリースされた『Endless Etude』、そしてBase Ball Bear小出祐介がラップを披露する『The Cut』と畳み掛けていく。

 

 その後、ラップつながりということもあってか、ダウ90000の飯原僚也が扮するMC.徳島のコーナーへ。MC.徳島がBase Ball Bearが生演奏する『EIGHT BEAT詩』のトラックにのせて、ダウ90000の他メンバーへの不満をラップでディスるディスる。くだらないといえばくだらないのだが、リリックは鋭いものもあり、笑いながら感心した。また、このコーナー内でも園田の失恋話が語られたのだが、それを聞いたBase Ball Bearの関根史織がいたたまれなくなったのか両手でしばらく自身の顔を覆っていたのが印象的だった。

 

 その後、ダウ90000のコント『三竦み(さんすくみ)』へ。恋愛は所詮じゃんけんのように三竦みでグルグル回っているという構造を巧みに描いたコントなのだが、その三竦みにすら入れない孤独な役柄が園田。舞台上に園田を残したまま、Base Ball Bear『kodoku no synthesizer』へ。3人がこの曲を演奏している間も園田は物思いに耽っていて、直前のコントや楽曲自体の内容を越えて、何と言っていいかわからない気持ちで見ていた。その後、園田はフッと笑みを浮かべて去り、Base Ball Bear『Tabibito In The Dark』、『changes』へ接続していく。悲しみや痛みを振り払った後の希望を提示しているようで、コント『三竦み』の結末のその先を照らすような選曲にも感じた。

 

 アンコールでは、Base Ball Bearとダウ90000の全メンバーが再集結。2022年11月23日に公開された劇場版ダウ90000ドキュメンタリー『耳をかして』の中で披露された曲『耳をかして』。当時はダウ90000の忽那文香だけがラップで歌っていたが、今回はこの曲をBase Ball Bearの演奏とともにダウ90000の8人全員で披露。歌詞の内容はダウ90000の自己紹介かつセルフボーストになっていて、今回は8人がそれを歌うことで、当時よりもパワーアップして聴こえた。

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 ほとんど楽しかったのだが、少し残念だったことも。それはダウ90000のコントの最中、舞台袖の無関係な音や話し声が何度かマイクで拾われたままになっていたこと。そのため、舞台上の台詞が一部遮られていて、ややノイズに感じてしまった。

 

 とはいえ、自分が聴き続けているBase Ball Bearと見続けているダウ90000が、羅列ではなく融合していることに不思議な感慨を抱いた。コントと楽曲が溶け合う多幸感は、他に経験したことのないものだった。これが一夜限りではなく、次に続く何かの始まりのように感じた。まだまだこの2組が組むことで新しいものが生まれる可能性がある。いつかまた違う形での融合を見られたら。